野村證券株式会社 フィデューシャリー・マネジメント部 シニアコンサルタント 西迫 伸一
ブラウン・フィールド段階のインフラ投資は安定したインカム・ゲインの得られる投資として近年世界の年金基金の関心を集めている。しかしこれまでのところ日本における普及状況は高いとは言えない。国内年金基金にとって、インフラ・ファンドの評価及びリスク管理のための判断材料が不足しており、これらの機能をアウトソーシングできる業者も多くはない。発注者及びインフラ運営者からの情報開示や、ゲートキーパー及びコンサルタントのファンド評価が実績を積み重ねながら、資産運用業界全体が新しい投資対象として市場形成を進めるべきであろう。
【キーワード】インフラ投資、インフラ・ファンド、年金運用
【Key Word】Infrastructure investment,Infrastructure fund,Pension fund management
みずほ証券株式会社 ストラテジックソリューション部 副部長 福島 隆則
我が国では、今後、インフラの老朽化が急速に進むことが想定されており、それにつれて右肩上がりで増えていく維持管理・更新費が、財政を圧迫することも懸念されている。こうした課題に対して、民間資金の活用による解決が期待されているが、それを現実のものとするには、“市場の眼”を通した客観的な投資先の選別を基本とし、継続的・循環的な投資を促す仕組みや、市場環境の整備なども必要となるだろう。本稿では、その具体策として、インフラへの投資に整合的な年金基金を呼び込む為の「日本版PIP」の仕組みや、グリーン・フィールドのプロジェクトに公共セクターの資金を“呼び水”的に投入する「老朽化インフラリプレイスファンド」の仕組みを提案している。
【キーワード】インフラ投資、PIP、グリーン/ブラウン・フィールド、PPP、老朽化インフラリプレイスファンド
【Key Word】Infrastructure Investment, PIP, Green/Brown field, PPP, Infrastructure Replacement Funds
新日本有限責任監査法人 インフラストラクチャー・アドバイザリーグループ マネージャー 奥 雄太郎
新日本有限責任監査法人 インフラストラクチャー・アドバイザリーグループ グループリーダー 福田 隆之
インフラファンドとはインフラを対象とした投資ファンドの総称であり、豪州・欧米等の諸外国において、PPP(官民連携)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)によるインフラ整備の普及とともに急速に成長してきた。インフラファンドの投資対象には経済インフラ・社会インフラの双方が含まれ、主な投資家は長期間にわたり安定的なキャッシュフローを求める年金基金等の機関投資家である。
我が国においても、改正PFI法等の成立により、公共施設等運営権を活用した事業への民間企業の参入が可能となった。現在、空港・上下水道・道路の分野で運営権の活用について具体的検討が進められている。日本政府は向こう10年で2兆円~3兆円の運営権事業を創出する目標を掲げており、順調に実現すれば、我が国においてもインフラファンド市場が立ち上がっていくことが期待される。
【キーワード】インフラファンド、年金、機関投資家、運営権、改正PFI法
日本不動産研究所 研究部・特定事業部 主席専門役 愼 明宏
韓国では、1990年代前半、民間資金を活用した社会資本整備に関する法(いわゆるPPP/PFI法)が制定され、コンセッション(公共施設等管理運営権)制度等を背景にPPP/PFIが進展した。さらに、2000年代前半にはインフラファンドが数多く組成され、銀行や生損保・年金基金等機関投資家の投資マネーが流入し、インフラ投資市場が確立された。本稿では、韓国のインフラ投資市場を支える法制度の仕組みや、インフラファンド、さらにそれらを資金面で支える韓国年金基金等のアセットアロケーションを紹介し、日本のインフラ投資市場活性化のための参考としたい。
【キーワード】韓国、インフラ民間投資、最小運営収益保証制度、インフラファンド、公的年金
小松 広明・谷 和也
本研究では、歩行者通行量と店舗賃料の関係を明らかにするため、まず歩行者通行量と業種別店舗数の関係について把握した。その結果、歩行者通行量は、各業種の店舗数に対して正の影響を与えていることが示された。特に、小売業店舗数に対して、歩行者通行量による影響力が最も強く作用していることが明らかとなった。次に、歩行者通行量と店舗賃料の関係について、歩行者集客ポテンシャル変数を新たに導入し、その統計的有意性を確認した。その結果、当該変数の統計的有意性が示され、歩行者通行量が店舗賃料の価格形成要因として正の影響を与えていることが確認された。商業繁華性を反映する歩行者通行量を公的調査資料をもとに定量的に捉えることは、店舗賃料の地域要因及び個別的要因の格差修正率の精査に寄与するものと考えられる。不動産鑑定評価実務においては、歩行者通行量を地域資料の一つとして収集及び整理しておくべきであろう。
キーワード:店舗賃料、歩行者通行量、ヘドニック賃料関数
中原 洋一郎・廣田 善夫
地下埋設物は、土壌汚染のように調査方法が法令により示されてはいないが、予想外の地下埋設物が与える経済的な影響は大きく、土地取引に当たっては慎重な取り扱いが必要な事項である。
本稿では、平成21年7月14日に福岡地裁小倉支部にて示された判決を中心に、地下埋設物が存する土地における瑕疵担保責任の考え方及び土地取引に当たって留意すべき事項を整理するとともに、地下埋設物の調査手法についても概観する。
キーワード:地下埋設物、地中埋設物、瑕疵担保責任、試掘調査、物理探査
外国鑑定理論実務研究会