現在、内閣府国家戦略特区において「「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会」が進められている。「スーパーシティ」構想とは、内閣府HPによれば「AI及びビッグデータを活用し、社会の在り方を根本から変えるような都市設計の動きが国際的に急速に進展していることに鑑み、 暮らしやすさにおいても、ビジネスのしやすさにおいても世界最先端を行くまちづくりであって、 第四次産業革命を先行的に体現する最先端都市」とされている。
12月17日、政府は国家戦略特区諮問会議を開き、安倍首相は会議において「「スーパーシティ」構想は、いち早く実現させなければならない、実装すべき技術やサービスについて早急に検討を進めてほしい」と述べ、実現の加速化を指示したと報道された。
平成30年11月26日時点の資料によれば、人工知能(AI)やビッグデータを活用し、社会の在り方を根本から変える都市設計の動きが加速している中で、第四次産業革命を先行的に体現する都市とされる。
不動産(土地)の価値は、人々の生活スタイルと密接に関わっている。特に地価が高い土地(あるいは地域)というのは、多くの人が集まるところである。では、人が集まるところとはどんな所(地域)だろうか?
首都圏などの公共施設(電車や地下鉄など)が高度に発達した地域では「駅前」が最大の人が集まるところである。地方では、「自動車社会」が影響し、かつての駅前よりも少し離れた大型商業施設や公共施設等が集積する地域が高い場合がある。どちらにしても、「多くの人が集まるところ」が不動産(土地)の価値や価格に大きな影響を及ぼす。
そこで、「スーパーシティ」構想が実現したことを考える。人は自宅に居ながらにして、買い物、医療、行政手続、学校教育が受けられるライフスタイルになる。もちろん、仕事も「テレワーク」が主流となれば、自宅で仕事が可能となり、通勤ラッシュや渋滞、行列に耐えてまで仕事場に行きたいとは思わなくなるだろう。
となれば、自宅で日常生活に必要な消費やサービスの提供を受け、都心部などの人が多く集まるところに行こうとする気持ちにはなれないかもしれない。もちろん仕事も自宅で済むならば通勤者も減少するだろう。店舗や事務所を訪れる人はやがて少なくなり、あえて家賃が高い駅前に店舗を構えるよりも、通信販売にビジネスをシフトし、物流拠点を重要な設備として整備する。
人の移動が少なくなれば、交通機関も本数が少なくなるかもしれない。地方では既にそのようになっている。町に来る人は趣味、観光、友人との面会、コンサートやイベントといった仕事のためというよりもレジャー目的で来る人が多くなるだろう。
ライフスタイルの変化により、交通機関への接近性はさほど重要ではなくなり、それよりもインターネット環境、自然環境、快適性などが重視されるようになるかもしれない。
駅前よりも人が集まり易く、あまり混雑しないところのほうが好まれるかもしれない。
店舗や事務所よりも、物流施設やデータセンター、自動運転自動車の格納庫などの利用方法が多くなるかもしれない。
つまり、「スーパーシティ」構想は、人々のライフスタイルや働き方、買い物やサービスの消費行動を変化させ、その結果、不動産に対する需要をも変化させてしまう可能性がある。いままでとは異なる不動産の価格形成がなされる時代に変化する可能性が高いと感じる。