2023/03/13 米国年金基金が投資に際してESGの要素を考慮することを禁止する法案についての、最近の動きは?

 米国の企業年金は、トランプ前政権時代に、投資に際して金銭的要素のみを考慮すべことが義務づけられた。しかし、バイデン現政権になって方針が変わり、ESG要因の考慮を認める規則が2023年1月末に発効した。ところが、米国の上院下院とも、ESGを考慮した投資判断を禁じる法案を可決した。バイデン大統領は、これに対し拒否権を発動すると見られている。

 両院の動きは、化石燃料の高騰で米国の石油メジャーの事業収支が未曽有の黒字となり、株主への配当とともにCO2削減のための設備投資を増やすという宣言をしたことに対し、共和党だけでなく、民主党の一部も呼応したものと推測できる。

 このところウクライナ戦争をきっかけに、EUを中心とした行きすぎたESG投資礼賛にブレーキがかかり、EUタクソノミーでも移行期においては、原子力と化石燃料であるLNGの利用が認められた。また、日本でも岸田首相がGXに関する予算化の説明において、資源の乏しい日本では、規制の厳しいグリーンファイナンスより移行ファイナンスによる調達が望ましいことを公表している。世界のリーダーである米国のESG投資に対するソフトランディングの姿勢は、日本や新興国の脱炭素社会への進め方と歩調が合っていると考えられる。