一般財団法人日本不動産研究所 不動産エコノミスト 吉野 薫
新型コロナウイルス感染症の収束は見通せないが、世界経済の先行きに対する見方は徐々に好転している。我が国の家計を取り巻く状況が本格的に改善するには一定の時間を要するとみられる中、外需に端を発する製造業の回復如何に日本景気の先行きが懸かっている。日本銀行は緩和的な金融政策が長期化することを見越して政策の微調整を行った。当面、我が国の低金利環境が継続する可能性が高い。その一方、海外における金利上昇リスクには注意を要する。
【キーワード】 新型コロナウイルス感染症、実体経済、金融経済、不動産投資家の意識
【Key Word】 Novel Coronavirus Disease, Real Economy, Monetary Economy, Real Estate
Investors’ Sentiment
一般財団法人日本不動産研究所 金融ソリューション部次長/市況モニタリング室長 横尾 崇尚
日本国内でも「コロナ禍」と呼ばれる世の中になって早くも1年以上が経過した。この間、世界の国々ではロックダウン等感染拡大を防ぐ様々な施策がなされたことで、ヒト・モノの移動が制限され、特にパンデミックが深刻化する局面で社会経済の大きな収縮をもたらした。それでは国内不動産市場全体で「コロナショック」はあったのだろうか?本稿では、弊所の予兆管理システムからコロナ禍の不動産市場展望を行う。
【キーワード】 コロナショック、予兆管理システム、短期予測(特許権活用)、不動産取引市場構造分析
一般財団法人日本不動産研究所 研究部 上席主幹 櫻田 直樹
「主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)」は、主要都市の高度利用地等に位置する調査対象の地価動向等を国土交通省が調査し、公表するものである。2020年初頭からの新型コロナ感染症の感染拡大の影響は、地価LOOKレポートの調査結果にも現れており、2020年の地価LOOKレポートではほぼ100%の調査対象が上昇から横ばいや下落に転じた。感染症への恐れや感染防止対策は、国内外の様々な経済活動を停滞させたと言われており、地価LOOKレポートの調査結果もこうした状況が発端となった店舗賃料の下落等複数の要因が関与したものと考えられる。また、このような地価動向の変化は大都市圏の商業拠点で顕著に見られ、インバウンド消費の恩恵を受けたエリアや飲食等の店舗やアミューズメントが集積する都市拠点で下落幅が大きい。
【キーワード】 地価LOOK レポート、地価動向、地価変動率、四半期
松岡 利哉
2020年11月5日に「田畑価格及び賃借料調(2020年3月末現在)」を公表した。米価の上昇基調に不透明感もあり、田賃借料及び田価格の下落率は拡大傾向にある。本稿では、公表した調査結果に加えて、その後分析した内容を紹介する。
【キーワード】 田畑価格、田畑賃借料、米価
平井 昌子
当研究所は2021年3月末現在の「市街地価格指数」を2021年5月25日に公表した。「市街地価格指数」からみた最近の地価動向の主な特徴は次のとおりである。
1.「全国」の地価動向は、全用途平均(商業地・住宅地・工業地の平均、以下同じ)で前期比(2020年9月末比、以下同じ)▲0.1%となり、下落が続いたが下落率は縮小した。
2.地方別の地価動向は、コロナ禍の影響で下落が続く地方が多くなっているが、前期と比べると経済活動も持ち直しの動きがみられることから、下落率は縮小した。
3.三大都市圏の地価動向を全用途平均でみると、「東京圏」は前期比0.2%上昇、「大阪圏」は同0.0%横ばい、「名古屋圏」は同0.2%下落となり、前期と比較すると回復がみられた。
4.「東京区部」の地価動向は、全用途平均で前期比0.1%上昇、商業地で同0.5%下落、住宅地で同0.0%横ばい、工業地で同2.5%上昇となり、工業地は堅調な動きが続いている。
※全用途平均:商業地、住宅地、工業地の平均変動率
最高価格地:各調査都市の最高価格地の平均変動率
東京圏:首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む都市
大阪圏:近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む都市
名古屋圏:中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市
六大都市:東京区部、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸
【キーワード】市街地価格指数、全用途平均、地価上昇、地価下落
愼 明宏
当研究所は、「第44回不動産投資家調査」の結果を2021年5月25日に公表した。調査結果(2021年4月)の概要は以下のとおりである。
1.期待利回りの動向は、前回調査に続きコロナ禍の影響でアセット毎に異なる結果となった。オフィスの期待利回りは、「札幌」で0.1ポイント低下したが、「東京・丸の内、大手町」をはじめとする多くの調査地区では前回比横ばいとなった。賃貸住宅一棟は、ワンルームタイプについては、「横浜」「神戸」等で0.1ポイント低下したが、「東京・城南」等多くの調査地区では前回比横ばいとなった。一方、ファミリータイプについては、前回比0.1~0.2ポイント程度低下する地区も多くみられた。
コロナ禍の人流抑制が大きく影響した「都心型高級専門店」は、「東京・銀座」や「大阪」を含む全ての調査地区で期待利回りが前回比横ばいとなった。コロナ禍で観光・出張需要が減退したホテル(宿泊特化型)は、「東京」「大阪」「那覇」で前回比横ばいとなったが、「札幌」「仙台」「名古屋」「京都」「福岡」では、前回比で0.1ポイント上昇した。一方、コロナ禍で施設需要が伸びている物流施設は、前回調査に続き、「東京」をはじめとする多くの調査地区で期待利回りが0.1~0.2ポイント低下した。
2.今後1年間の投資に対する考えは、「新規投資を積極的に行う」が94%で前回調査(2020年10月)よりも2ポイント上昇した。不動産投資家の投資姿勢は、昨年4月の緊急事態宣言で一時減退したが、世界的な金融緩和等を背景に、前回調査でいち早く回復し、今回調査でも積極的な姿勢が維持された。
【キーワード】不動産投資家調査、利回り、新規投資意欲
外国鑑定理論実務研究会
不動研(上海)投資諮詢有限公司 董事総経理 林述斌