公益財団法人日本交通公社 観光地域研究部 環境計画室長 中島 泰
サステナブルツーリズムについては、90年代半ばに概念が提唱されて以降、研究と実践の両面において、特に海外を中心に進展していった。そうした中、コロナ前は主にオーバーツーリズムへの対処方策として、そして現在はアフターコロナにおける望ましい観光のあり方として、国内も含めて大きな注目を集めている状況にある。しかし、その概念は幅広く、さまざまな立場・視点から語られ、語られる側、主に観光地(地域・自治体)や事業者(産業界・個別事業者)に混乱を招いている。本稿では、複雑に重なり合った現在のサステナブルツーリズムの概念・現象の整理を行い、観光地・事業者等がサステナブルツーリズムを推進する意義(意味・目的)を自覚し、政策の継続性や戦略性を高めるための考え方のフレームを提示する。
【キーワード】持続可能な観光、サステナブルツーリズム、アフターコロナ
【Key Word】 Sustainable Tourism, Post-Pandemic
西武文理大学 サービス経営学部 教授 波潟 郁代
日本人の旅行・観光スタイルは、高度経済成長期のレジャーブームに端を発するマスツーリズム型から、社会の成熟化、技術の進化、価値観の変化により、各人の趣味や自己実現を果たす手段へと進化してきた。近年は観光立国推進に向けた規制緩和や基盤整備、多様な宿泊施設の登場、農業や地場産業との連携による新しい魅力づくりなどにより、旅行者の行動範囲や活動はさらに多様化が進んだ。しかし3年以上に渡る新型コロナ感染症禍での制約ある旅行は、再び同質的、画一的に逆行する傾向がみられた。現在、旅行市場が本格的に回復する中、新型コロナが旅行者に与えた影響と今後の旅行・観光のあり方について、旅行者の視点で意識調査や各種データから考察する。
【キーワード】観光、Z 世代、マスツーリズム、新型コロナ、ワーケーション
九州産業大学 地域共創学部 観光学科 准教授 室岡 祐司
コロナ禍は観光事業の不確実性の高さを浮き彫りにしたが、新たな余暇のスタイルが生まれ、持続可能な観光が益々注目される等、今後の観光の成長に資する動きも顕著となっており、改めて観光による地域振興を問い直す機会となっている。本論は、地域の活力としての観光にフォーカスし、改めて観光振興の意義や留意点をみつめ、コロナ禍による九州観光の変化を都市部観光地と温泉観光地から概観した。その上で、観光振興による地域の活性化や成長には、対話と共通目標、時代の変化への対応、地域連携による楽しみの提供が求められ、これらはコロナ禍の有無に関係なく、持続可能な観光振興の基盤となる一方、コロナ禍による変化を踏まえつつ、気付きを得た課題へ真摯に向き合っていけるかが鍵となってくることを指摘した。
【キーワード】観光事業、コロナ禍、インバウンド、持続可能、九州
【Key Word】 tourism、the coronavirus pandemic、inbound、sustainable、Kyushu region
松岡 利哉
当研究所が2022年10月25日に公表した2022年3月末現在の「山林素地及び山元立木価格調」によると、山元立木価格はウッドショック等に伴う歴史的上昇となり、山林素地価格は31年ぶりに下落から上昇となった。本稿では、「山林素地及び山元立木価格調」の調査結果に加えて、その後分析した内容を紹介する。
【キーワード】山林素地価格、山元立木価格、素材(丸太)価格、ウッドショック
松岡 利哉
2022年10月25日に「田畑価格及び賃借料調(2022年3月末現在)」を公表した。2年連続の米価の下落により、田賃借料及び田価格の下落率は拡大傾向にある。本稿では、公表した調査結果に加えて、その後分析した内容を紹介する。
【キーワード】田畑価格、田畑賃借料、米価
近藤 共子
1972-73年の列島改造期には過剰流動性により投機的土地取引が全国的に拡大したとされるが、地価・土地取引等のデータは整備途上にあった。当時の土地取引調査等の結果及び関連データを、日本列島改造問題懇談会前後の経緯も踏まえ、半世紀の節目に再整理する。第1回は当時の土地買占め調査結果等を再吟味し、住宅地等とともに山林原野が広汎に買い占められ高騰し、以降の国土利用変化につながっていくことを確認する。
【キーワード】列島改造期、土地投機、新全総総点検、山林原野
【Key Word】 land property boom, urbanisation, the remodeling of the Japanese Archipelago
弁護士・立教大学法学部兼任講師 関口 康晴
外国鑑定理論実務研究会
業務部 次長 古山 英治