市により造成された問題となっている土地には耐震性の点で隠れた瑕疵があるとして市に責任を認め、建物修理費相当分を信頼利益による損害として支払いを命じました。
市が造成し、切土地盤、切土と盛土地盤、盛土地盤に分かれた造成地のうち、切土と盛土地盤及び盛土地盤上にある宅地について、地震により、崩落、地割れ、地盤沈下、擁壁ブロック塀倒壊・亀裂、家屋の基礎及び壁面の亀裂、接合部の分離、床面の隆起などが発生した。このため住民が、宅地の価値が減少し又建物修理費用がかかったとして、その額を、市を相手に、売主瑕疵担保責任に基づいて請求しました。
(本判決では、宅地造成業者はだれであったか、と、県や市は宅地造成工事の施工に関する基準を定めるなどの規制権限があったか、については争われませんでした)
1978(昭和53)年の震度5とされる宮城県沖地震により発生した敷地の崩落等に関する責任が追求された裁判の控訴審判決です。本件の一審では市に責任は認められませんでしたが、本判決は上に記したように市の責任を認めています。
裁判所の認定によれば、問題となった造成地の販売にあたっては、造成地の地盤の構造が、切土地盤、切土と盛土地盤、盛土地盤の3種類に分かれていることやそれぞれの性質についての説明等は、購入者にされていなかったということです。また、地盤の構成状況が販売価格に反映されてもいなかったようです。そしてこのことが瑕疵が隠れていたことの認定の一端をになっていることは否定できないと思われます。
地盤の耐震性については、一審は、当時の技術水準に従った工事が実施されていたので瑕疵なし、としましたが、本判決は、当時の技術水準という一般的な基準ではなく、造成者が事前の調査や造成地区が所在する地方の地震発生歴等から知れる事情に対応した工事をしなければならないと、個別性を重視した判断で瑕疵を認定しています。
本判決が示した地盤状態の告知や工事方法といった点は、地震の被害者を救うといった観点及び工事のあるべき姿としての観点からは一定の評価をすることはできます。その一方で、それらを現実の宅地販売や造成工事に反映するには、当時であれ現在であれ、造成者等に独自の判断に基づく行動を求めることになるため人的素養に依存することになり、また地方性を考慮した一種の基準の作成を求めるにしても、さまざまな影響を考慮・検討した上で作成されねばならないことは確かなことであると思われます。