ここに紹介するのは、東京都目黒区に位置する中央環状新宿線の大橋ジャンクション建設をめぐるまちづくりの事例である。[写真1]
目黒区・東京都・首都高による一体開発で誕生したこの大橋一丁目地区の新たな街は、「O-Path目黒大橋」と住民によって名付けられている。ジャンクションの形状をイメージした「O」と、その屋上につくられた公園の小道を表す「Path」からなる造語である。
大橋地区は、京都の町のように時の経過のなかで築かれた歴史や文化、伝統という地域のレガシーを保全・継承する類のまちづくりとは異なる。一見、ごくありふれたまちづくりだが、他にみられない特色がある。
それは「まち・みち一体型まちづくり」と言い表せるような、従来の道路整備の常識を覆す発想のまちづくりにある。道路施設を地区中心に据えつつも、その未利用空間を、居住その他の生活空間に有効活用し、両者が自然なかたちで融合・共存して豊かな地域環境を形成している。この空間構成の設えに、大橋地区の固有性まちづくりの意義がある。
読者の皆さんも既にご存知の方も多いと思うが、まず、大橋地区まちづくりの全体像を理解され、固有性まちづくりの核心に触れていただきたい。